

| 一日目 | |
| 台風を追うように石垣空港に降り立った僕を待っていたのは いまだ台風の影響の残るどんよりとした空と横なぐりの雨だった。 空港には足止めを食った大勢の観光客が通路にあふれかえっていた。 帰れない人々を尻目に空港でレンタカーを借り 軽く昼食を済ませ雨でも見学可能な八重山民族園へと向かう。 |
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傘の骨が折れるくらいの嵐だった。 門には大きなシーサーが二対、中に入れば軽やかな三線の音にあわせ島唄が聞こえてくる。 音をたどっていくとそこには真っ黒に日焼けした民族衣装のおじさんが生で島唄を奏でていた。 おじさんは僕を認めると手を止め僕を自分の歌うその場所に招きいれてくれた。 僕はおじさんの歌う島唄を何曲か楽しみ、僕の知っている数少ない沖縄の唄のひとつ「十九の春」をリクエストした。 おじさんは快く僕のリクエストを聞き入れてくれた。 |
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♪ 私が貴方に ほれたのは ちょうど一九の春でした |
| 島唄を堪能し僕はおじさんに丁寧にお礼を言ったあとホテルへと向かった。 運がいいのか悪いのかホテルは予約のキャンセルが相次ぎ 僕は予定よりも眺めのいい部屋で滞在することとなった。 しかし直径900kmもの雲を伴う台風は中心が通り過ぎたとはいえ 重たい雲を伴い空いちめんをぐるぐると旋回しヤシの樹を大きく揺らしていた。 |
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| 台風によって葉っぱだらけになったプールは水が抜かれ清掃され新しい水が注がれていた。 ホテルのスタッフが申し訳なさそうに水が満ちるのに2日かかるのだと僕に告げた。 僕は水もなくすっかり本来の姿を失った寂しげなプールを横切り ホテルのプライベートビーチへと向かった。 |
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| やはりビーチも同じ状況で打ち上げられた海草が 波にもまれてすっかり秩序を失った砂とシェイクされ パンフレットで見た美しい南国のビーチとはかけ離れた姿に成り果てていた。 ブルドーザーが場違いな轟音を上げながら右に左にとせわしなく動き回っていた。 |
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| 海はようやく濁りがとれたのだという。 しかし、そこにある海は僕の頭の中にある南国のどんな海の風景とも 一致しなかった。 |
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| 砂浜ではヤドカリまでもが家を失って貝殻の取り合いをしていた。 僕は貝殻を着ていないヤドカリというのを初めて目にした。 |
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| 二日目 | |
| 幸い雨は上がりエメラルドグリーンの海と白いサンゴの砂浜が美しい川平湾へと向かった。 そこはガイドブックにある写真があまりにも美しく僕が必ずいってみようと思っていた場所だ。 風は相変わらず強く、速い速度で流れる雲に切れ目が見えることはなかった。 途中道にハイビスカスがひとつだけ咲いていた。 通りがかりの地元の方に伺うと普段はいったいをハイビスカスの花が覆っているという。 |
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| 花が無いことにがっかりするよりはむしろ 昨日までの台風で花はすべて落ちたというのに もう大きな花をつけているその生命力に僕は素直に驚いた。 小学校の校門の上にはシーサーがおどろおどろしい顔で遠くを見据え 北陸では見慣れない芝生のグランドが雨をふくみ青々と輝いていた。 |
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| 川平湾に来てみたもののコバルトブルーの海も天気にはかなわず鉛色に沈んでいた。 海底を巡るグラスボートも誰もいない砂浜で所作がなさそうにしていた。 あきらめて僕は街へと戻った。 |
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| 僕が今回の旅行で楽しみにしていたことのひとつに泡盛がある。 今では北陸でも簡単に手に入る泡盛を僕はここを訪れる前からたしなみながら その芳醇な味わいがどのようなところで生まれているのかに深い関心を持っていた。 街に戻り僕は島一番の酒造所「八重泉酒造」を訪れた。 工場を覗いてみたがもちろん僕にはそこでどのような作業が行われているのかなどわかるはずもない。 ただ、僕が最近はまっていた「八重泉」を作っているところまで はるばるやってきたのだということに湧き上がる感動を覚えた。 |
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| 泡盛を一口だけ試飲させていただき、あとは夜のお楽しみということで公設市場で買い物のあとホテルへと引き返した。 プールには水が半分ほど満ちてはいたものの、いまだリゾートを楽しめる状態ではなく もちろん、プールサイドには人影などなかった。 |
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ぼくは、その日も南国を楽しむことを早々とあきらめ、オリオンビールと泡盛で静かな酔いを楽しんだ。 ジーマミ豆腐(ピーナッツの豆腐)、アーサー汁(海草スープ)、島ぜんざいなど 耳慣れないメニューのシンプルなおいしさにお酒はずずんだ。 |
